「白塚診療所ツバメ日記2003」 その2 医師 井岡大義
6月1日
やきもきさせられましたが、やっと雛のくちばしが見えました。何羽孵ったか楽しみです。この日、診療所南側の換気扇の壊れた入り口に巣を作っていたムクドリが巣立ちました。ビービーうるさかったので来年巣作りしないよう塞がねばなりません。
6月2日
餌を雛にやるのが見えました。母親は時々巣にはいります。孵化していない卵があるのか、雛が冷えないように暖めているのかよくわかりません。巣のすぐ近くの駐車場にカラスがおりました。巣を狙ったわけではなく、誰かが落としたアイスクリームが目的だっただけなのですが、親たちは巣が狙われたと思ったのでしょう、カラスの周囲を威嚇するように飛びまわりました。そのたびにカラスは首をすくめたりしてかわしていましたが、しつこい攻撃に音をあげたのか飛び去っていきました。
親の愛はカラスに立ち向かう程の力を生み出すようです。
6月5日
雛がフンするのを目撃しました。お尻だけ巣から突き出して上手にしていました。教えもしないのにたいしたものです。最低3羽はいるようでした。
6月9日
雛4羽を確認
6月11日
5羽と確認しました。一昨年と一緒です。
6月19日
12時に健診に来た妊婦さんが、ツバメが1羽落ちてましたよと教えてくれました。びっくりして、取るものもとりあえず飛んでいくと、いませんでした。診療が終わって見に行くと、いました!専用トイレのダンボールの箱の縁に停まっているではありませんか。
どうなるのだろうと見守っていると、パタパタと飛びました。でもぎこちない飛びかたで、すぐ地面に、落ちたというのが適切なような感じでおりていました。2度ほど繰り返したあと、どこかに飛んでいきました。残りの4羽はおとなしく巣から顔をつきだしていました。あの飛びかたで大丈夫かなあと心配していますと、診療所の南側のブロック塀に停まっているとのことです。確かに、裏のブロックの上にいました。よく見ると、あのツバメ独特の燕尾服のようなシッポもはっきりしませんし、色も艶のある黒色ではなく、薄汚れた感じの黒色で、まるでスズメに炭を塗ったような感じです。頼りなさそうに羽をパタパタさせてピーピー泣いていました。
時々親が周囲を飛び回って、「まだ早いよ、台風も来るから巣にお帰り」と説得しているようでした。そうなのです、この日も台風(6号)が近づいていたのです。そのうちに、ヨタヨタした感じで飛び去りました。ああ、あの子は駄目だなあと諦めました。
奇跡が起きました。14時に再び巣を見ると、なんと5羽が顔をだしているではありませんか。親の説得が効を奏したみたいです。
6月20日
朝、巣に4羽だけいました。一度だけ外で3羽交錯したのを見ましたので、昨日の独立心旺盛な子が1羽で巣立ったようです。
6月22日
昨夜まで4羽いたのが、朝見ると、巣には1羽残っているだけでした。時々、先に巣立った子達でしょう、周囲を飛び回ったり、結界の綱にとまって、早くおいでよと催促していました。やはり、兄弟の中にも怖がりのどんくさい子が必ずいるようです。中々飛び立とうとしません。仕方無しに親は時々餌を運んでいました。7時40分頃、やっと巣の縁に立ちあがって羽をパタパタさせたり準備始めたようです。でも、巣の奥の方に顔を向けていました。「飛び出すには外をむかんといかんだろうが」と悪態をついていますと、7時48分でした、羽をパタパタさせていたかと思うと、ポトンと診療所の壁ぞいに落ちはじめました。あっ、落ちると思いましたが、地面1メートル程で急に向きを変え飛んでいきました。本当にブザマな巣立ちでした。でも、5羽無事に巣立たせてホッとしました。
6月23日
夜、また事件が起きました。巣に2羽入っていました。そして結界に1羽停まっていました。その時、低空飛行でバタバタと飛んできた1羽が、巣まで上がりきらず、壁にぶつかって落っこちてしまいました。タイルの上を、チョコチョコ歩きながらバタバタしています。結界の上に停まっていた1羽が心配そうに飛び回ったり、近くにおりたりしました。巣の中の2羽は知らん顔でした。兄弟でも仲の良し悪しがあるようです。2度ほど巣に上がろうとしましたが、失敗しました。
せめて結界にとまらせてやるかと、脚立をとりにいきました。
帰ってみると、いませんでした。目撃者によると、向かいにある家の方へ飛んでいったそうです。昨日最後に巣立ったドジな末っ子は最後まで世話をやかせ、心配させられました。しかし、ドシな子ほど可愛いものです。
24日からツバメを見ていません。巣立ち後のことは別にして、今年も無事5羽の巣立ちを見守ることができました。やはり、「結界」は魔物から雛を守る大きな力があることが判りました。そして、「結界」はツバメが巣に入ってから張る方がいいことも判りました。来年の課題は、ツバメをびっくりさせないように、巣作りしてから、どの時点で「結界」を張るかということです。又、来年が楽しみです。
2003年6月29日
井岡 大義