
「白塚診療所ツバメ日記」 医師 井岡大義
白塚診療所の産婦人科の入り口前の壁に、ツバメが巣を作ったのは確か5年前です。その年5羽が巣立ちました。朝早く巣立ったのか、7時に私が見た時はからっぽで、巣立ちの瞬間を見られず残念な想いがありました。
4年前は巣作りはなく、3年前巣作りしましたが、まだヒナが小さいうちに(毛もはえていませんでした)、雀に突き落とされ全滅しました。何気なくチョンチョンと近づいた雀が突然飛び上がってヒナをくわえ落とすのを目撃した時は、何も手助けできない悔しさを味わいました。私に出来たのは、ヒナを埋めてやることだけでした。
2年前は巣作りがなく、もうツバメは診療所に来ないのかと思っていましたら、昨年は巣作りしました。ヒナの小さな時期、雀の襲撃も無くヤレヤレと思っていましたら、大きなくちばしでピーピー餌をねだっている頃、あの憎たらしいカラスに襲われ、又、全滅しました。最後の1羽が巣に逆さまにぶらさがって、飛べない羽をパタパタしながら、最後に力つきて落ちるのを何も出来ないまま悲しく見守っていました。
2回も悲惨な状況を目撃し、この時、来年こそは何とか我々の手でヒナを守って無事巣立たせてやりたいと決意しました。助産婦の清水さんとカラス撃退法の情報を集め、カラスは羽に何か触れるのを嫌がるらしいという記事を見、来年は巣の回りに何か囲いをしようと考えました。
そして今年になって、5月13日に巣作りが始まりました。
5月13日
囲いは何にしようと色々考えました。最初、穴の大きな箱を考えましたが、天井に取り付けるのが難しく、万一落ちたら下を通る人に迷惑がかかると思い断念しました。
5月17
日
清水さんと相談して、ミスタージョンで細いシュロ縄と取り付けフックを買ってきました。そして飲み屋の縄ノレンのように、シュロ縄ノレンで巣を囲いました。ヒナが「魔物」から守られるよう「結界」と名付けました。
5月20日
1羽だけ巣にいる時間が長くなりました。
5月21日
ほとんど巣に入っていました。この日の夕方、一緒に2羽確認し、母子(父子)家庭ではないことに安心しました。
6月4日
卵をつつくのかヒナに餌を与えるのか巣の底をつつくような動作が見られるようになりました。
6月7日
ヒナの存在を確認しました。
6月10日
ヒナが巣から顔を出しました。4羽は居るようでした。
6月11日
ヒナがお尻を巣から出して上手にフンをしました。巣の中を汚さないように、こんな小さな時からけなげにも頑張っているのを見ると、我々の子ども達のオムツ離れはゆっくりしています。下にフン受けの段ボール箱を準備しました。
6月14日
5羽かなと思えましたが、15日、5羽いることを確認しました。この時大変なことが起こりました。巣の前方の壁が剥がれ落ちたのです。こんな欠陥住宅を確認せず、又、補修することもせず巣作りし、無計画に5羽も産んでヒナ達を危険にさらすことになった親ツバメの無責任さに怒りを覚えました。ツバメもヒト並みになってしまったか、「ブルータスお前もか」の心境でした。狭い、巣とはいえない台の上で日増しに大きくなるヒナ達は押し合いへしあい、体を動かすたびに落ちそうになり必死にバタバタ羽をはばたいて巣の中にもぐりこむ姿をはらはらして見ていました。又、ヒナ達に平等に餌をやっているようには見えず、不公平な与え方のようで、なかなか貰えないヒナが可哀想でした。
6月23日
朝は5羽が相変わらずひしめいていましたが、11時頃見ると、1羽が「結界」の綱にとまっていました。押し出されてやむなく綱に飛びついたのか、自由を求めて飛び出したのか、その瞬間を見損なったのでわかりませんが、落ちないでくれと必死に念じていました。幸い元気で餌ももらい、巣の中の4羽共々夕方元気なのを確認しました。
6月24日(日曜日)
朝10時の段階では、5羽とも同じ状態でした。外出して、11時30分に確認すると、綱の1羽が消えていました。急いで周辺を捜索しましたが、影も形もありませんでした。巣立ったのか、結界から身を乗り出した為に「魔物」に襲われたのか、巣立ったと思いこむことにしました。